NO.42トトロの風景を歩く
初冬の里山と雑木林めぐり
(2002年12/1 埼玉県所沢市・入間市 狭山丘陵)
「農の風景を歩く」第4回は、狭山丘陵。映画「となりのトトロ」の舞台モデルになったといわれる一帯だ。氷雨交じりのあいにくの天気だったが、「トトロのふるさと財団」の三上晃朗さんの案内で、早稲田大学のキャンパスを出発。ここから「さいたま緑の森博物館」まで、地元で”ひらのおか”と呼ばれる丘陵地帯を歩く。なだらかな丘陵地帯に野菜畑や茶畑、ところどころに雑木林がひろがっている。大きく息を吸いこみたくなるような、おおらかな風景に一同歓声を上げる。しかし、ここは開発の最前線。すぐそばまで、土木工事が迫り、自然とせめぎあっている。なんとか、このすばらしい景観と調和するような形におさまって欲しいが…。 お昼前に、「さいたま緑の森博物館」に到着。「博物館」といっても、案内所があるだけ。雑木林全体が博物館だ。入口の大谷戸湿地は、昭和30年代まで田んぼだったところ。林の中にはお茶の木もところどころ残っている。ここが農家の”里山”として生活に欠かせなかった頃の名残だ。「農家にとって、雑木林は”農地”なんです」と、三上さん。クヌギ、コナラなどを植林し、秋は落ち葉を集めて堆肥に、木は育ったら燃料用の薪に、材木に、と無駄なく利用してきた。畑の農作物、人間の営みと雑木林がひとつながりの、まさに”循環型”の生活。それを維持するには、常に木の生長を見守り、林の手入れをし続けなければならない。「手を入れなければ、雑木林は保てません」。事実、人の手が入らなくなった林は下草が生い茂り、常緑樹が増え、植生が変ってしまっている。財団やボランティアが懸命に作業しているが、なかなか追いつかないそうだ。
問題は、「ボランティアを指導できる人材が不足していること」と、三上さん。
たくさんの木や植物の名前などを教えていただきながら、1時間ほどで、林の西側、西久保湿地に出る。田んぼの際まで雑木林が迫り、向こうには低い丘陵地が続く。狭山丘陵でも今ではここくらい、という典型的な”谷戸”の風景である。春の芽吹きの頃はどんなだろう?ホタルの出る頃、夏まっさかりの頃、四季折々を見てみたいものだ。
★写真上から
なだらかな丘陵地に茶畑や雑木林がひろがる”ひらのおか”/みどりの森博物館で。三上さん(右)と受講生/西久保湿地に続く田んぼ