田舎の学校つれづれ

NO.24「家庭菜園の十年」

「田舎の学校」が家庭菜園実習を始めてから、ほぼ10年が経ちます。この間、家庭菜園・野菜作りへの関心が広がり、ビジネスチャンスとして様々な業界が多様な企画や商品を出してきています。家庭菜園向きの土・肥料や栽培キットなどの資材、種苗などです。また、主に行政が区画を貸すだけだった市民農園は、民間企業が参入するようになり、施設の整った指導者付きの貸し農園として広がりを見せています。屋上緑化も、芝生や花壇だけでなく、菜園施工の需要が増え、野菜栽培の技術が必要になってきています。
   ただ、現在の菜園のインストラクターの人数と質がどうなっているのか心配です。野菜作りは、青菜などを除いては一年に一回だけの経験です。指導者になるには、何年かの農作業の経験が必要になるでしょう。
   「田舎の学校」では、この秋から「農業生産法人・三鷹ファーム」と共催で「菜園インストラクター養成講座」を開講します。そこで質の高いインストラクターが育って行くようにカリキュラムを組んでいきます。
   「家庭菜園」は、今でも学問として確立する途中にあります。「田舎の学校」が農家に家庭菜園実習の指導をお願いした当初は、農家さんにも私たちにもお手本がなく、また、東京農大の先生方の講義も試行錯誤でした。プロや専門家の農法を、素人の家庭菜園向けに応用するのは、大変だったと思います。やがて、都市農業の多種多品目栽培は、一般の家庭菜園に十分に応用できると実感しました。教室講義も家庭菜園向けの内容になり、「ゼロから始める家庭菜園実習」講座として整ってきました。
   野菜栽培は、地域や農家によって多少やり方は異なりますが、土作り・栽培管理などの基本は同じです。この頃は新聞・本・ネットなどに野菜栽培のノウハウや情報が溢れていますが、基本を大切に、学んだ知識を自分流にアレンジして試みればよいと思います。
   農家の方は「野菜の顔をよく見なさい」といいます。じっくり野菜と向き合っていると、だんだん表情が見えてきます。早く、すぐに結果を求めるのではなく、永く、臨機応変に野菜と付きあうことが大切なのでしょう。
   家庭菜園は、自分で作って自分で食べる”自産自消”です。フードマイレージからみても、好ましいと思われますが、堆肥・肥料・農薬のやりすぎや、地下水などの環境汚染にならないよう、基本をきちんと守って、楽しんでください。
(2010年8月 田舎の学校代表 田中直枝)