NO.13「白神山地とブルゴーニュの小さな村々」
世界遺産・ブナの原生林で有名な白神山地。秋田県と青森県にまたがるこの山地の中心地域は、人が近づけない険しい山並みが続きます。それだからこそ、そのままの自然が残り、屋久島とともに世界自然遺産(1993年)にも登録されました。
しかし、高度成長期に秋田県と青森県をつなぐ「青秋林道」の建設が着工され、白神山地を縦断することになりました。能代の鎌田幸一さんは、ブナ林がもたらす豊かな水を育むこの山地の保全運動を始めますが、地元の理解が得られず、大変な苦労をされました。鎌田さんの思いは研究者やマスコミを動かし、多くの人々が貴重な自然を残す意義を訴え、ブナが切り倒される直前にこの林道建設は中止になりました。 今年十月、白神山地を訪ねる講座で私たちが訪れた岳岱自然観察園には、伐採予定の印(番号)のついたブナの木がありました。切られずに残って本当に良かった!この講座では秋田県側から白神山地周辺を巡ります。昨年初夏も訪れましたが、美しい景観、地元の人たちの心温まるおもてなし、海の幸・山の幸の美味しい食べ物と充実した二日間を過ごしました。しかし、目を転じると、能代駅前の商店街はシャッター街。地方都市の置かれた厳しい現状に胸が痛みます。
先日、フランス・ブルゴーニュ地方の小さな村を巡るNHKの連続番組を見ました。どの村も若者が都会に出て、残された者が細々と農業をしている小さな村々。しかし、統一された街並みと自然を取り入れた景観は美しい。
その村が、地元の特性を生かした観光事業で元気を取り戻したそうです。特産の栗やトリュフでお祭りを開き、農家伝統の料理を振舞うレストランなどが紹介されていました。外部の人たちがその村の良さを見出して助言し、町おこしのキッカケを作ったそうです。我が国でも、元気になった村々の話題が多く出てくる時が来ると良いですね。
(2007年11月 田舎の学校代表 田中直枝)