田舎の学校つれづれ

NO.12「ナショナルトラストと北海道の旅」

   7月の連休を利用して、19年ぶりに北海道へ行ってきました。動物写真家で作家でもある竹田津実さんが3年前にオホーツク沿岸の小清水町から旭川市へ越され、お宅を訪問するというのが第一目的。竹田津さん執筆の『オホーツクの十二ヶ月』(福音館書店)が今年二つの賞を受賞。札幌で開かれるそのお祝いの会に出席するのが第二の目的で、それに友人に会ったり、観光したりの忙しい旅でした。
   ナショナルトラストという自然保護活動があります。『ピーターラビット』の著者、ビアトリクス・ポターが、イギリス湖水地方の広大な自分の土地を自然のままで残すことから始まりました。
   竹田津さんが獣医として小清水へ赴任し、傷ついた野生動物を看たりと地元の人々との交流の中で生まれたのが、(財)小清水自然と語る会(1976年)です。その頃、日本中どこでも同じですが、小清水の森周辺も開発が進み、野生動物が危機にありました。動物写真家としても有名になり始めた竹田津さんは、包容力と大らかな人柄で周りの人たちを引きつけ、森を多くの人たちで買い取る運動・ナショナルトラストへと発展していきました。私たち家族も「オホーツク村」と名づけられたこの森の保護運動へ参加し、村民になりました。彼の原作『キタキツネ物語』の映画化など、「小清水自然を語る会」はその活動が認められ、1988年に日本で二番目のナショナルトラスト・自然保護法人として認可されました。現在日本のナショナルトラスト認可団体は55あります。
   札幌から旭川へ移動する日、富良野と美瑛に寄りました。富良野の富田ファームは、ラベンダーとカスミソウやケシなどが花盛り。それは見事なラベンダー園で、たくさんの人々が訪れていました。美瑛駅に降りると、『北の国から』のテーマソングが迎えてくれ、丘巡りの観光バスに乗りました。小麦の黄色とジャガイモやテンサイの緑が帯模様を作り、丘陵一帯に広がる様は息をのむほどの美しさでした。
   農家が原野を開墾してきた広大な畑、結果として美しい景色となっていますが、斜面での作業が大変なので平にしようという話も出ているとか。景観を見に来る観光収入は農家には一銭も入らないという事実は、やはりどこかオカシイ。生業としての農業と結果として維持される景観、それを楽しむ人たち、上手く繋ぐ手立てはないのでしょうか。そんな思いを抱いた旅でした。

(2007年8月 田舎の学校代表 田中直枝)