NO.2「都市農業との出会い②」
東京都心近くで割合に農地が残っているのは、練馬区・世田谷区と三鷹市です。1964年の東京オリンピックを境に日本は高度成長期に入り、都市に農地はいらないという空気の中、宅地開発や様々な課税で農家は農地を手放して行きました。私が取材を始めた1990年頃から、農地は都市の緑としてまた、都民の台所として見直され始めましたが、相続が生じれば農地を手放すという状況は今でも変わっていません。
農地からは作物生産だけでなく、生態系の循環・食の安全や自給率を考えたりと多くのことを学べます。農家は百姓といって、百の技を使いこなすと言われるくらい様々な仕事を創意工夫しながらやっています。農地や農家の方々は、私たち都市に暮す者がふと足を止めて携わってみたい気持ちにさせられる魅力に溢れています。
1998年にお世話になっていたプロデューサーから、NHK文化センター・青山教室で農業講座を企画したいということで、コーディネートを依頼されました。さっそく星野直治さんに相談し、「自分もそうした教室は初めてだが、やってみてもいいよ」とのことで、星野さんの畑で実習が始まりました。半年後にやはり三鷹市の石井市太郎さんが引き受けて下さり、受講された方々に喜ばれました。それをきっかけに、農業関連・環境関連の講座を企画運営したく、2001年6月に有限会社「田舎の学校」として今に至っています。
星野さんや石井さんのところでは多種多品目の野菜や花の栽培、人が集まりやすいという都市農家の条件を生かして、「家庭菜園実習」の他に「ハーブ実習」や「畑でクッキング」を開いています。「田舎の学校」が、都市に残された私たちとって貴重な憩いの場・農地を守っていくお手伝いができればと思っています。
(2005年2月 田舎の学校代表 田中直枝)