田舎の学校つれづれ

NO.29 都市の「農」の継承と可能性

寒さで桜の開花も遅かった春でした。それに加えて、関東では大風や大雨、それに竜巻に見舞われ、気候の変化を感じます。
東日本大震災から1年が過ぎました。徐々に復興をしているようですが、若者がいなくなった地域の再興は難しいでしょう。ふるさとが失われていく姿を見るのはさぞ辛いことと、胸が痛みます。
今号では、若い農家の高橋健太郎さんとベテラン農家の星野直治さんに取材をしました。年の差は40歳以上ですが、農業への思いをお聞きして胸が熱くなりました。

星野さんと田中さん

星野さんと、筆者

私と星野さんとの出会いは、20年ほど前のテレビ取材を通してですが、懐の深いやさしさと聡明さは変わらず、今でも困った時には駆け込んでいます。高橋さんは、初めてお会いした時の不安そうな様子とは別人のように成長しています。その姿を見るのは嬉しいですし、若い人の育って行くスピードが羨ましくもあります。ずっと変わらないのが、周りから愛される彼の素直さです。

高橋健太郎君

高橋健太郎さん

お二人を通して感じたのは、ベテランから若者へ着実に農業が継続されていることです。農地は、後継者や相続などの問題で減り続けています。都市の農地も減少していますが、消費者が隣にいることは、地方に比べて恵まれています。庭先直売・直売場・近くのスーパー・飲食店など、販路は様々です。地方の大産地からの仕入れより小回りが利くのが、市場や小売業者からすると便利だそうです。急な要請、少量の仕入れなどに細かに対応できるわけです。いろいろなことに挑戦できるのも、都市農業の強みかもしれません。
「田舎の学校」は農業環境関連の講座を企画運営して12年たちました。その間に農家、受講生、講師とたくさんの方々と出会いました。このところよく舞い込む野菜栽培の指導・管理の仕事には、家庭菜園実習やハーブ講座を長年受講されてきたベテラン会員さんたちのご協力をいただいています。野菜作りは、指導や管理ができるようになるまでに様々な農関連の勉強が必要となります。皆さん10年以上の経験を積まれた人たちです。お人柄も技術も申し分なく、安心してお任せできます。屋上やテラスでの作業は暑かったり風が強かったり、虫がいたり大変こともありますが、畑とはまた違った楽しさもあります。それぞれの担当圃場の野菜の生育状態や土壌状況の情報交換も、勉強になります。
「田舎の学校」流菜園作りのモデルがいくつかできるといいな、と思っています。
(2012年5月 田舎の学校代表 田中直枝)