田舎の学校つれづれ

N0.19「水と暮らし」

   もうすぐ梅雨入りになりますが、かつての梅雨はしとしとと降り続き、終わり頃にざっと集中して降り、カラッと夏空になって梅雨が明ける、というイメージでした。
   この頃の梅雨や夏の雨はスコールを思わせる激しさで、短時間に集中して降ることが多くなりました。地球温暖化が関係しているようです。
   秋からの江戸と京都の講座は、水に関係するものです。川が町の中を流れている風景は心をホッとさせますし、湧水や井戸に出会うと安堵の思いがします。水のある場所に人が集まり、都を作り、水を利用しうまく制御したところは長く都が続いた歴史があります。京都は地下水に恵まれ、多くの井戸があります。江戸は台地であったため、暮らしや産業を支える水をいかに確保するかは、幕府も庶民も大きな課題でした。水運のための堀割り・飲料水のための上水、これらが機能して百万の人々が暮らしてきました。
   しかし、江戸も京都も水の歴史を大きく変えたのは、明治以降の近代化です。水路は道路や鉄道に、井戸は水道の普及へと、それまで水と寄り添ってきた生活が、水は管理するものという転換期を迎えることになりました。年配の人なら、小川や堀が埋め立てられ、いつの間にか自動車道になっていったことを思い出すでしょう。水の風景がずいぶん遠くなったと思いますが、それも環境問題から見直され始めています。
   町田里山の田んぼで米を作っていますが、稲が田んぼですぐ、力強く根を張り、生長するのを見ると、水の力の凄さを感じます。21世紀は水の世紀と言われるほど、水問題が深刻です。地球温暖化による干ばつと多雨、海のC02による汚染。そんな中で、日本は水の豊かな国です。水を大切に活用し、食文化・住文化・産業と育んできた先人の智恵を、梅雨空を眺めながら思い起こすのもよいかもしれません。

(2009年5月 田舎の学校代表 田中直枝)