NO.33 「田舎の学校」が目指してきたもの
10月初めの30℃の暑さから、急に秋になりました。そのせいで我が家のヤマボウシが例年になく美しく紅葉しています。秋が短くなり、秋冬野菜の植付け・播種時期がますます難しくなっています。
20年前に、テレビ映像関係の仕事を通して都市農業に興味を持ったのが、「田舎の学校」事業を始めるきっかけになりました。農業・環境関連の社会人向けの生涯学習が「田舎の学校」の事業コンセプトですが、多くの会員さん、講師の方々との出会いを支えに事業を続けてまいりました。まず農業関連を中心に講座を組みましたが、実習指導を引き受けてくれる農家さんを探すのに苦労しました。東京・神奈川・千葉・埼玉・群馬・長野で、野菜を中心に米・麦・蕎麦・大豆などいろいろな栽培に挑戦してきました。
環境に関連する講座として、食は料理教室・山菜とキノコ採り、自然環境は自然観察会・白神山地、住は江戸東京・京都講座とおおよそ分けられます。食べること、住むことを辿っていくと、必ず水―湧水・川・運河―につながります。水辺の風景を歩くとホットしますし、ありがたいと思います。さらに食べることと住むことは絡み合いながら生活の根幹をなし、それを支える環境や農を疎かにしてはならないと、講座を通して学んできました。
先日、秋田の友人からキリタンポ鍋セットが届き、親類で鍋を囲みました。比内鶏とふっくらしたキリタンポはもちろん、肉厚なマイタケと見事なセリは香り高く、さらに懐かしい白神山水のペットボトルが入っていました。すべてが地域で守り育てられた食材。農を生業とする地域の環境保全の姿勢が見て取れます。日本にはこのような地域が各所にあり、農業を継続するため、地域を活性化するために努力を重ねていますが、悲しいかな、限界に近い場所もあるようです。四季があり、多くの食材と水に恵まれている日本は、緑豊かな国土。地方の再生を強く念じます。
農地の減少は、担い手不足と農政の失敗が考えられます。さらに、住宅と町並みの変化は、専門家や行政、私たちが日本文化の継承を重要視してこなかった結果でしょう。その象徴が都市集中・東京一極集中だと思います。効率優先で都会にはますます人・金・物が集まり、地方はますます衰退してゆく。東京五輪決定は、その流れに拍車をかけることが危惧されます。
この13年間は、通信手段の変化に翻弄され、助けられてきました。当初は実習の当日連絡は固定電話のみ。FAXもない方もいらして、実習前日・当日の朝は自宅電話にしがみついていた気がします。携帯電話が徐々に広まり、パソコンへのメールもボチボチ、現在はほとんどの方が携帯電話を持ち、メールでもやり取りができ、連絡が本当に楽になりました。インターネットの発達は社会に画期的な変化をもたらしたと、小さな事業やっていても痛切に感じますが、それがもたらす弊害、子どものいじめや若者のネット依存など心が痛みます。ゆるゆると事業を続けてきましたが、私たちが置かれている社会状況といつも向き合ってきたことは確かなようです。
(2013年11月 「田舎の学校」代表 田中直枝)