田舎の学校つれづれ

NO.5「沿線の風景」

   「田舎の学校」の講座には遠出をするものがあります。今年は休講になりましたが、「田舎の学校」当初からお付き合いしている長野県原村の数々の講座が、遠出の始まりです。JR中央本線か中央自動車道を利用しますが、東京と山梨の県境、奥多摩の山々から笹子トンネルを抜けると、やがて甲府盆地に突入します。雪をいただいた南アルプスが目に飛び込み、盆地が終わる頃には八ヶ岳が見え、しばらくすると長野県に入ります。高低差があり、山々が続くこの車窓は、少し厳しく息を呑むほど美しい風景を展開してくれます。
   群馬県新治村(現みなかみ市)には関越自動車道で行きます。関東平野の遠くに秩父の山並みを眺めながら埼玉県を北へ縦断(それにしても関東平野は広い)すると、谷川連峰が見える群馬県に入ります。ここの風景は中央道より穏やかで、高低差もあまりありません。
   埼玉県美里と、児玉の日曜大工・木工講座には八高線を利用します。途中からは単線のディーゼル車になり、秩父多摩の山々の裾に沿って走り、沢や谷、丘陵また谷といくつもの里山を通過して行きます。電車のゆっくりした速度のおかげで里山の風景を観察でき、「旅はこうでなくては」などと仕事を忘れる一刻を楽しんでいます。寄居駅を過ぎると関東平野の田園風景へと変化し、下車駅も間近です。
   神奈川県伊勢原の講座へは、宅地化で緑が虫食い状態の多摩丘陵の間をぬって小田急線で行きます。神奈川県に入ると心なしか、空の明るさを感じ、柑橘類が目立ってくるのも温暖な土地柄を思い起こさせてくれます。
   これらの車窓は四季により変化し、それぞれに美しく、水と緑と山々の豊かな日本の風景があります。ただ、荒れた林、田畑、休耕地増加を見るにつけ、国土保全には農林業の振興がどれほど大事かを思い知らされる沿線風景でもあります。 

(2005年11月 田舎の学校代表 田中直枝)